特定技能所属機関と呼ばれる1号特定技能外国人の受け入れを行っている企業が四半期つまり3ヶ月ごとに報告などを行うことが義務付けられています。1号特定技能外国人の雇用を続けるためには、報告を続ける義務があります。報告を怠ったり、書類に対する虚偽や不履行が発見された場合には、処罰の対象になるため注意が必要です。
今回は、特定技能で外国人を採用した後に必要な届出について、書き方のポイントなどを分かりやすく解説していきたいと思います!
目次
1. 定期届出の種類
- 提出期間について
- 登録支援機関に依頼しているケースの必要書類
- 自社支援を実施しているケースの必要書類
2. 書類作成のポイント
- 登録支援機関に依頼しているケースの書類について
- 自社支援を実施しているケースの必要書類について
3. 定期届出の提出先
4. まとめ
1. 定期届出の種類
- 提出期間について
定期報告は、4半期に1回(年に4回)と決まってはいますので、提出期間は下記の通り定められています。
ステップ | 対象期間 | 提出期限 |
第1四半期 | 1月1日~3月31日 | 4月14日 |
第2四半期 | 4月1日~6月30日 | 7月14日 |
第3四半期 | 7月1日~9月30日 | 10月14日 |
第4四半期 | 10月1日~12月31日 | 翌年1月14日 |
- 登録支援機関に依頼しているケースの必要書類
登録支援機関のサポートを受けている場合、企業側が提出する書類は以下の通りです。
<必須書類> ①受入れ・活動状況に係る届出書(参考様式第3-6号) ②特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況(参考様式第3-6号 別紙) ③賃金台帳の写し(特定技能外国人のもの) ④賃金台帳の写し(比較対象の日本人のもの) <状況に応じて必要になる書類> ⑤報酬支払証明書(参考様式第5-7号) ⑥理由書(任意様式) |
参照:特定技能所属機関(受入れ企業・事業主の方)による定期届出 提出資料一覧表
報酬の支払いを通貨払いにしている場合は、報酬支払証明書が必要になります。
原則として、届出が遅延することは認められませんが、万一遅延した場合はその理由を記載した「報告遅延理由書」の提出が求められます。
- 自社支援を実施しているケースの必要書類
登録支援機関に支援を委託せず、自社支援を実施している場合、企業側が提出する書類は以下の通りです。
<必須書類> ①支援実施状況に係る届出書(参考様式第3-7号) ②1号特定技能外国人支援対象者名簿(参考様式第3-7号 別紙) <登録支援機関に委託しているケースと同様の必須書類> ③受入れ・活動状況に係る届出書(参考様式第3-6号) ④特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況(参考様式第3-6号 別紙) ⑤賃金台帳の写し(特定技能外国人のもの) ⑥賃金台帳の写し(比較対象の日本人のもの) <状況に応じて必要になる書類> ⑦相談記録書(参考書式第5-4号) ⑧定期面談報告書(1号特定技能外国人用/参考書式第5-5号) ⑨定期面談報告書(監督者用/参考書式第5-6号) ⑩転職支援実施報告書(参考書式第5-12号) ⑪支援未実施に係る理由書(参考書式第5-13号) ⑫理由書(任意様式) |
さらに、期間中に特定技能外国人から相談や苦情を受けた場合は、その内容を記載した以下の書類も提出となります。
→相談記録書(5-4号)
理由書に関しては、基本的に登録支援機関に委託しているケースと同様です。
2. 書類作成のポイント
特定技能の定期報告において、企業は必要に応じて様々な書類を作成・提出しなければなりません。
以下、それぞれの書類につき、作成のポイントをご紹介します。
- 登録支援機関に依頼しているケースの書類について
登録機関に委託していても、受け入れ企業から提出が必須の書類も多いので、届出の中で間違えやすいポイントを押さえた作成が重要です。
<必須書類> ①受入れ・活動状況に係る届出書(参考様式第3-6号) ②特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況(参考様式第3-6号 別紙) ③賃金台帳の写し(特定技能外国人のもの) ④賃金台帳の写し(比較対象の日本人のもの) <状況に応じて必要になる書類> ⑤報酬支払証明書(給与が現金払いである場合) ⑥理由書(任意様式) |
受入れ・活動状況に係る届出書には、届け出る対象期間に在籍していた、特定技能外国人の情報について記載します。
具体的な届出事項としては、以下のようなものがあげられます。
① 対象期間内に受入れていた特定技能外国人の総数 ② 特定技能外国人の氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留カードの番号 ③ 特定技能外国人が特定技能の活動を行った日数、活動の場所、従事した業務の内容 ④ 特定技能外国人が派遣労働者等である場合には、派遣先の氏名・名称・住所 ⑤ 報酬を決定するにあたって、特定技能外国人の比較対象者とした従業員に対する報酬の支払状 ⑥ 所属する従業員の数 ⑦ 特定技能外国人と同じ業務に従事する人の新規雇用者数 ⑧ 離職者数 ⑨ 行方不明者数 ⑩ ⑥~⑨における日本人・外国人の人数 ⑪ 健康保険、厚生年金保険、雇用保険に係る適用の状況 ⑫ 労働者災害補償保険の適用の手続に関する状況 ⑬ 特定技能外国人の安全衛生に関する状況 ⑭ 特定技能外国人の受入れにかかった費用の額とその内訳 |
→届出書みぎみぎ作成のポイント
届出書の“5 雇用状況に関すること”については、具体的な従業員の人数を記載する欄が設けられています。
つまり、在籍者数・新規雇用者数・離職者数・行方不明者数を数字として記載する必要があります。
カウントする従業員は、フルタイムで就労している人が対象です。
特定技能所属機関(企業)が雇用するすべての従業員が対象となるので、特定技能外国人が働いている事業所以外の事務所に勤務する従業員も含まれます。
また、在籍者数・新規雇用者数に関しては、届出対象期間内に「就労」を始めた人が対象となるので、単純に雇用契約を締結しただけの人は人数に含まれません。

※参照元:参考様式第3-6号|受入れ・活動状況に係る届出書(記載例)
“10 特定技能外国人の受入れに要した費用の額”については、①・②それぞれの費用としてどのようなものが該当するのか、イメージが湧かない人も多いかもしれません。
上記の①に関しては、例えば登録支援機関への支援委託手数料、日本語学習のための教材費などが該当します。
続いて②は、参考書式第1-16号「雇用の経緯に係る説明書」に記載した費用が含まれます。
具体的には、紹介手数料・ビザ申請費用などが該当しますが、渡航費用や住居の準備費用に関しては外国人が負担するケースもあるので、その場合は外国人負担分と分けて記載します。
なお、法人の場合は本店・本社から1部提出し、個人事業主の場合は事業主が1部提出します。
②特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況(参考様式第3-6号別紙)

※参照元:参考様式第3-6号別紙|特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況(記載例)
特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況に関しては、記載事項が一つひとつ区分されているので、どこに何を記載すべきなのか比較的分かりやすいはずです。
氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留カード、活動日数、給与など、対象期間内に受入れた特定技能外国人の情報を記載していきます。
給与等の額を記載する際は、給与等の額を計算するタイミングに注意しましょう。
あくまでも、届出の対象期間において「該当する月」に支払われた額を記載するので、賃金の締切日は関係ありません。
例えば、毎月20日締めの翌月10日支払いであるなら、6月の支払額は「4月21日~5月20日」までの就労分を記載することになります。
また、給与の支払いがない月に関しては、斜線を入れておきましょう。
③、④賃金台帳の写し
賃金台帳の写しに関しては、
○特定技能外国人のもの
○比較対象の日本人のもの
上記2点が必要です。
自社に比較対象となる日本人がいない場合、すでに退職してしまった場合は、特定技能外国人と「同一の業務」に従事する日本人従業員の賃金台帳を提出します。
自社の給与が現金払いである場合は、報酬支払証明書の作成・提出が必要です。
記入が必要な内容は比較的単純なもので、以下の情報を証明書に記入後、特定技能所属機関(企業)側と特定技能外国人側の署名があれば問題ありません。
<対象労働者> ○氏名 ○性別 ○生年月日 ○国籍・地域 ○在留カード番号 <報酬> ○報酬総額 ○現金支給額 ○支給日 |
注意点として、報酬支払証明書は特定技能外国人1名につき1枚が必要になるため、対象となる特定技能外国人が複数人いるのであれば、全員分の証明書を提出しなければなりません。
⑥理由書
理由書は、届出期間内に届出ができなかった場合、その理由を記載して添付するための書類です。
それ以外にも、その他の届出事項等について、以下のような「特異な状況」を説明する際に用いられます。
○特定技能外国人の社会保険・雇用保険の被保険者資格取得手続を行っていないケース →身分事項に関する説明、手続がなぜ未了なのかの説明が必要 ○特定技能外国人、または特定技能所属機関に関する保険料・税の納付を行っていない場合 →未納の保険料の種類、税目に加えて、事務所名や理由についても説明する |
なお、様式に関しては任意のため、自社の書式等で作成して構いません。
- 自社支援を実施しているケースの必要書類について
自社支援を行っている企業は、登録支援機関に委託しているケースとは異なる届出を行う必要があります。つまり、登録支援機関が作成してくれる書類は、自分で作成しないといけなくなります。
<必須書類> ①受入れ・活動状況に係る届出書(参考様式第3-6号) ②特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況(参考様式第3-6号 別紙) ③支援実施状況に係る届出書(参考様式第3-7号) ④1号特定技能外国人支援対象者名簿(参考様式第3-7号 別紙) ⑤賃金台帳の写し(特定技能外国人のもの) ⑥賃金台帳の写し(比較対象の日本人のもの) <状況に応じて必要になる書類> ⑦相談記録書(参考書式第5-4号) ⑧定期面談報告書(1号特定技能外国人用/参考書式第5-5号) ⑨定期面談報告書(監督者用/参考書式第5-6号) ⑩転職支援実施報告書(参考書式第5-12号) ⑪支援未実施に係る理由書(参考書式第5-13号) ⑫理由書(任意様式) ⑬報酬支払証明書(給与が現金払いである場合) |
以下、それぞれの書類作成におけるポイントをまとめました。
※①受入れ・活動状況に係る届出書(参考様式第3-6号)
②特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況(参考様式第3-6号 別紙)
⑤賃金台帳の写し(特定技能外国人のもの)
⑥賃金台帳の写し(比較対象の日本人のもの)
⑬報酬支払証明書(給与が現金払いである場合)
上記5つの書類の記入ポイントは「登録支援機関に委託しているケース」と同じなので、ここでは割愛します。
③、④支援実施状況に係る届出書(参考様式第3-7号)/1号特定技能外国人支援対象者名簿(参考様式第3-7号 別紙)
支援実施状況に係る届出書には、特定技能所属機関(企業)の法人番号・名称・住所等を記載して、当該四半期中に実施予定となっている支援を実施したかどうかチェックを入れます。
支援を実施した特定技能外国人が複数人いて、支援状況が同じである場合は、別紙となる「1号特別技能外国人支援対象者名簿」を併せて提出することもできます。
特定技能外国人とのやり取りの中で、相談・苦情対応が発生した場合、相談記録書に以下の情報を記載して提出します。
相談受理日
○相談者の氏名、性別、国籍・地域、生年月日、在留カード番号
○相談内容
○対応結果
○対応者の氏名
⑧定期面談報告書(1号特定技能外国人用/参考書式第5-5号)
定期面談報告書は、届出対象期間中に定期面談を実施した場合に提出します。
報告書には、面談対象者(1号特定技能外国人)・面談対応者の情報、面談結果等について記載します。
面談事項は多岐にわたりますが、原則としてすべての項目につき問題が「無」となっているのが基本です。
もし問題が発生していた場合、次項の「法令違反等への対応」への記載も必要です。
面談の結果、出入国または労働に関する法令に関して、不正・著しく不当な行為の発生を知った場合、特定技能外国人の保護を図るための措置を取り、関係行政機関に通報を行わなければなりません。
また、そのような行為を行った特定技能所属機関は,地方出入国在留管理局・支局に「出入国又は労働に関する
法令に関し不正又は著しく不当な行為(不正行為)に係る届出書(参考様式第3-5号)」を提出する必要があります。
同じ定期面談報告書でも、こちらは監督者用の報告書です。
その他の基本的な記載事項は、1号特定技能外国人用の書式と同じで、届出対象期間中に定期面談を実施した際に提出します。
転職支援実施報告書は、非自発的離職時の転職支援を実施した際に提出する報告書のことです。
特定技能外国人を、非自発的に退職させたケースとしては、以下のような例があげられます。
○人員整理のため、希望退職者を募集したり、退職勧奨を行ったりした場合 ※(天候不順・自然災害・新型コロナウイルス感染症等の感染症の影響のため、経営努力だけでは雇用を維持することが困難な場合は除く) ○労働条件に係る重大な問題があったと、労働者側が判断した場合 ※(賃金の低下・未払・過度な時間外労働・もともとの採用条件との相違など) ○就業環境につき重大な問題があった場合 ※(嫌がらせや差別など) ○有期労働契約の終了 ※(特定技能外国人の責めに帰すべき理由によらないもの) |
支援未実施に係る理由書は、1号特定技能外国人支援計画書において実施予定であった支援について、未実施のものが生じた場合に提出する書類です。
以下の中で未実施のものにチェックを入れて、その理由や担当者名などを記載します。
○空港等への送迎 ○住居の確保・生活に必要な契約に関する支援 ○生活オリエンテーション ○関係機関への同行等 ○日本語学習の機会提供 ○相談または苦情の対応 ○日本人との交流促進 ○非自発的退職時の転職支援 ○定期面談 ○その他任意的支援 |
実施の理由を書く際は、チェックを入れたそれぞれの項目別に書くのがよいでしょう。
ただし、簡潔に理由を記入することを忘れずに。
3. 定期届出の提出先
(1)郵送による届出
身分を証する文書等の写しを同封の上,支援委託契約の相手方(特定技能所属機関)の本店の住所を管轄する地方出入国在留管理官署宛てに送付してください。また,封筒の表面に朱書きで「登録支援機関届出書在中」等と記載してください。
(2)インターネットによる場合
出入国在留管理庁電子届出システムを利用して,インターネットにより届出を行うことができます。なお,事前に利用者情報登録を行う必要があります。
(3)窓口に持参する場合
支援委託契約の相手方(特定技能所属機関)の本店の住所を管轄する地方出入国在留管理官署
( 4 )届出書の提出先
届出書は、特定技能所属機関の住所(法人の場合は登記上の本店所在地)を管轄する地方出入国在留管理局・支局に提出します。
管轄地域や地方局・支局の住所は、下の表で確認してください。
地方局・支局名 | 管轄する都道府県 | 担当部門/住所 |
札幌出入国在留管理局 | 北海道 | 審査部門 〒060-0042 札幌市中央区大通西12丁目 札幌第3合同庁舎 |
仙台出入国在留管理局 | 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県 | 審査部門 〒983-0842 仙台市宮城野区五輪1-3-20 仙台第二法務合同庁舎 |
東京出入国在留管理局 | 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県 東京都、新潟県、山梨県、長野県 | 就労審査第三部門 〒108-8255 東京都港区港南5-5-30 |
東京出入国在留管理局 横浜支局 | 神奈川県 | 就労・永住審査部門 〒236-0002 神奈川県横浜市金沢区鳥浜町10-7 |
名古屋出入国在留管理局 | 富山県、石川県、福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 | 就労審査第二部門 〒455-8601 愛知県名古屋市港区正保町5-18 |
大阪出入国在留管理局 | 滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県 | 就労審査部門 〒559-0034 大阪府大阪市住之江区南港北 一丁目29番53号 |
大阪出入国在留管理局 神戸支局 | 兵庫県 | 審査部門 〒650-0024 兵庫県神戸市中央区海岸通り29 神戸地方合同庁舎 |
広島出入国在留管理局 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 | 就労・永住審査部門 〒730-0012 広島県広島市中区上八丁堀2-31 広島法務総合庁舎内 |
高松出入国在留管理局 | 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 | 審査部門 〒760-0011 香川県高松市浜ノ町72-9 高松出入国在留管理局浜ノ町分庁舎 |
福岡出入国在留管理局 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県 | 就労・永住審査部門 【持参による提出先】 〒810-0073 福岡県福岡市中央区舞鶴3-5-25 福岡第1法務総合庁舎 【郵送による提出先】 〒814-0005 福岡県福岡市早良区祖原14-15 |
福岡出入国在留管理局 那覇支局 | 沖縄県 | 審査部門 〒900-0022 沖縄県那覇市樋川1-15-15 那覇第一地方合同庁舎 |
4. まとめ
以上、「特定技能定期報告」について解説しました。特定技能外国人の住所や活動場所、活動内容の変更があった場合は必ず変更があったことを届出ましょう。定期届出は毎回同じフォーマットを提出しますので、2回目以降は変更がなければ記入する箇所もかなり少なく済みます。